清算価値保障原則は、一般再生債権者は、債務者が個人再生手続きを利用したことによって、自己破産手続きを利用した場合以上に不利益を受けないことを保障しています。ご相談の事案で破産手続きを利用した場合、オーバーローンの金額400万円とそれ以外の負債600万円の計1000万円に対し、生命保険の解約返戻金200万円による配当を行うことが予想され、配当率は20%になります。
このように、破産手続きによった場合の配当率が20%であることから、個人再生手続きでもこの水準がクリアできれば、清算価値保障原則に反しないと考えられます。
住宅資金特別条項を用いると、住宅ローンの残額1400万円を除いた負債600万円が一般再生債務となり、それに対して20%の配当がなされればよいとすると、600万×0.2=120万円が最低弁済額だということになります。
これで一つの考え方ですが、現実の個人再生手続における不動産の時価査定は厳格な調査・鑑定を経たものではなく、オーバーローンの額も不正確であることから、 オーバーローン額を考慮して計算した配当率で最低弁済額を決めることを否定する見解もあります。東京地裁の運用がそれであるとされ、一般債権者への配当原資となる生命保険の解約返戻金200万円を、そのまま最低弁済額として扱うことになります。