亡くなった母は,生前,マンションに一人暮らしをしていました。そのマンションは,母の名義でしたので,当然遺産に含まれると思っていたのですが,兄が遺産分割の場で,「あれは,俺が購入資金を全額出しているから,遺産ではなく俺の固有財産だ」と言い始めました。私はそんな話を聞いたことがなく,全く納得できません。この場合,どうすればよいでしょうか。

遺産分割を行うためには,分割の当事者が確定していること,分割の基準となる相続人の具体的相続分が確定していること,分割の対象となる相続財産の範囲が確定していることが必要となります。これらの事項のことを遺産分割のための前提事項といいます。この前提事項については,遺産分割の家事審判手続の中で判断できるのか,それとも民事訴訟を訴える必要があるのかという問題があります。
この点について,最高裁は,審判手続で前提事項について審理判断することができると判示していますが,それと同時に,「争う当事者は,別に民事訴訟を提起して前提たる権利関係の確定を求めることをなんら妨げるものではなく,そして,その結果,判決によって右前提たる権利の存在が否定されれば,分割の審判もその限度において効力を失うものと解される。」としています(最判昭和41年3月2日民集20巻3号360頁)。そうすると,審判で前提事項についての判断が行われたとしても,その後に訴訟が提起されれば,遺産分割審判の効力が失われる可能性があるということになります。
そのため,ある財産が遺産に含まれるかどうかに争いがある場合は,一般的には,民事訴訟で前提事項を解決した上で,遺産分割の調停や審判を申し立てた方がよいのではないかと思われます。
なお,遺産確認の訴えは,共同相続人全員が当事者になる必要がありますので(最判平成元年3月28日民集43巻3号167頁),訴えを提起する際には注意が必要です。

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